相続放棄するなら形見分けで金を受け取っていい?売る前の注意

相続放棄を考えている時の形見分けと形見の金の扱いを表したアイキャッチ

当サイトの記事は、国税庁・裁判所・法務省・e-Gov法令検索・国民生活センターなど公的機関の公開情報、田中貴金属工業の公表価格、各買取店の公式情報、Yahoo!知恵袋などの公開された声をもとに編集部が独自に執筆しています。相続・税金の個別の判断は、税務署・税理士・弁護士・司法書士・家庭裁判所などに確認してください。買取価格・条件は店や品物ごとに異なり、日々変わります。

相続放棄を考えているけれど、母の金の指輪だけは形見分けで受け取りたい。そんな気持ちになるのは自然なことですよね。

結論から言うと、相続放棄をするなら、形見の金を売ったり使ったりする前に一度立ち止まってください。相続財産を処分すると、相続を受け入れたものとみなされる決まりがあるからです。

この記事を読めば、相続放棄の期限と手続き、形見分けで気をつけたいこと、放棄した後の遺品の金の扱いが分かります。

遺品を整理中の人

父の借金が分かって、相続放棄を考えています。でも、父の金の腕時計は形見として持っていたくて…。

案内役

その気持ち、よく分かります。ただ、放棄を考えている間は、売ったり身につけたりする前に家庭裁判所か専門家に確かめておきましょう。まずは写真を撮って保管しておけば大丈夫です。

目次

相続放棄とは?3か月以内に家庭裁判所へ申述します

先に結論

相続放棄は、相続があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する手続きです。口で「放棄する」と言うだけでは成り立ちません。

裁判所の案内では、相続が始まった時、相続人は次の3つのうちどれかを選べるとされています。

選び方内容(裁判所の案内より)遺品の金はどうなる?
単純承認亡くなった方の権利や借金などの義務をすべて受け継ぐ遺産として分け方を決める
相続放棄権利や義務を一切受け継がない受け継がない
限定承認相続で得た財産の限度で借金などの負担を受け継ぐ手続きの中で扱いが決まる

民法915条には、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に、承認か放棄かを決めなければならないと書かれています。

放棄の方法は、民法938条で「その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」とされています。家族の間で「私は要らない」と伝えただけでは、法律上の相続放棄にはならないんです。

申述の窓口・費用・書類

項目裁判所の案内
期限自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内
申述先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
費用収入印紙800円分(申述人1人につき)と連絡用の郵便切手
共通の書類被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本
書類の追加申述人と亡くなった方の続柄によって、戸籍謄本などが追加になる

郵便切手の金額は、裁判所ごとに異なると案内されています。申し立てる裁判所に確認しておきましょう。

3か月で決められない時は、期間を延ばす申立てもできます

『遺品から何が出てくるか分からないのに、3か月で決めるなんて』と焦る方もいるかもしれません。

裁判所の案内では、3か月以内に財産を調べても判断する材料がそろわない時は、期間の伸長の申立てにより家庭裁判所が期間を延ばせるとされています。民法915条2項でも、承認や放棄の前に相続財産を調べることができると定められています。

相続放棄の期限と手続き、放棄後の保管までの流れを示した図解

放棄するか迷う時の進め方

放棄するかどうかは、遺品の金だけでなく、預金や家、借金なども合わせて考えることになります。金の品だけ見て決めないようにしたいところです。

迷う時の進め方
  1. 遺品の金を含め、見つかった財産を一覧にする
  2. 借金や支払いが残っていないかも調べる
  3. 3か月の期限がいつかを確かめる
  4. 判断できない時は、期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる
  5. 決める前に、弁護士・司法書士や家庭裁判所に相談する

一覧を作る段階では、金の品は動かさず、写真とメモで記録するだけにしておくと安心です。

相続放棄の前に形見の金を売ると、単純承認とみなされます

遺品を整理中の人

金のネックレスを1本売るくらいなら、問題ないですよね?

案内役

そこが一番気をつけたいところなんです。売るのは相続財産の処分にあたるので、相続を受け入れたものとみなされることがあります。

民法921条1号には、相続人が「相続財産の全部又は一部を処分したとき」は単純承認をしたものとみなす、と書かれています。全部でなく一部でも対象です。

つまり、遺品の金を1点だけ売った場合でも、相続を受け入れたと扱われる可能性があるんです。そうなると、後から相続放棄を申し立てても認められない原因になりえます。

同じ条文には、ただし書きとして「保存行為」は除くとされています。ただ、どこまでが保存行為にあたるかは、事情によって判断が変わります。

よくある失敗

「葬儀の費用に足りないから」「傷む前に」と、遺品の金を先に売ってしまうことです。理由があっても、放棄を考えているなら売る前に家庭裁判所や弁護士・司法書士に確認しておきましょう。

もう売ってしまっていた時は

『放棄するつもりだったのに、知らずに1つ売ってしまった』という方もいるかもしれません。

その場合は、隠したりせず、早めに弁護士や司法書士に事情をそのまま伝えて相談してみてください。いつ・何を・いくらで売ったかが分かる明細があれば、一緒に持っていくと話が早く進みます。

何をしてよくて、何に気をつける?

放棄を考えている間の遺品の金の扱いを、表にしてみました。判断に迷うものは、自分で決めずに専門家に確かめてください。

遺品の金に対してすること考え方
一覧を作る・写真を撮る承認や放棄の前に相続財産を調べることはできる(民法915条2項)
箱にまとめて保管しておく処分ではないので、まず取りたい対応
査定に出して金額を聞くだけ売らないなら処分ではないが、品物を持ち出す前に家族と共有しておく
売る・お金に換える処分にあたり、単純承認とみなされうる(民法921条1号)
自分の物として身につける・使う事情によって判断が分かれうるので、先に専門家へ
形見分けで受け取って持ち帰る品物の価値や事情による個別の判断。高価な物は特に注意

おたからや公式のコラムでも、相続放棄を考えている段階で遺品を処分すると単純承認とみなされて手続きに影響するおそれがあるとして、迷う時は着手前に家庭裁判所や専門家へ相談し、保管と目録作成に留めると案内されています。

相続放棄を考えている間に遺品の金にしてよいことと気をつけることを示した図解

相続放棄と形見分け。金を受け取ってもいい?

『形見分けくらいなら大丈夫だと聞いたけど…』と思う方も多いはずです。

結論から言うと、形見分けで受け取っても単純承認にならない、と言い切れる決まりはありません。受け取ってよい範囲は、品物の価値や事情によって個別に判断されます。

金は「値段が分かりやすい品」だからこそ注意

金の品は、重さと品位(K18やK24など)から、おおよその金額が出しやすい品です。

例えば18金の指輪とネックレスが合わせて10gなら、RE:TANAKA(田中貴金属のジュエリー買取)が2026年10月20日17:00に発表したK18のリサイクル価格15,214円で計算すると、15,214円×10g=152,140円です(税込・鑑定料・手数料込み。記事執筆日時点の参考値で、計算上の目安です)。

小さなアクセサリーでも、これくらいの金額になることがあるんです。思い出の品として受け取るつもりでも、財産として見られる可能性がある点は知っておきましょう。

放棄を考えている時に安心な対応
  • 形見の金は写真を撮って一覧にする
  • 箱にまとめ、ほかの相続人にも場所を伝える
  • 受け取りたい品があれば、受け取る前に専門家に相談する
後で困りやすい対応
  • 形見分けだからと高価な金を持ち帰る
  • 受け取った金をすぐに売る・作り直す
  • 誰にも言わずに品物を手元に移す

家族にはどう伝える?言い方の例

形見分けの場で「あなたも何か持っていって」と言われることもありますよね。断りにくい時は、理由を短く伝えておくと角が立ちにくくなります。

例えば「相続放棄の手続きをするつもりだから、今は何も持ち帰らないでおくね」。あるいは「放棄が終わったら、残す物はみんなで決めてね」と添えるのもよい方法です。

受け取りたい品がある時は、「この指輪だけは気になっているから、受け取っていいか先に専門家に聞いてみる」と伝えておきましょう。

放棄した後でも気をつけたいこと

民法921条3号には、相続の放棄をした後でも、相続財産の全部か一部を「隠匿し、私にこれを消費し」た時などは、単純承認とみなすと書かれています。

放棄の手続きが終わったからといって、形見の金を持ち帰ったり売ったりしてよいわけではないんです。形見分けの進め方そのものは形見分けで金・貴金属を分ける時の注意で詳しく説明しています。

相続放棄をした後、遺品の金はどうなる?

遺品を整理中の人

私が放棄したら、母の金の指輪は誰の物になるんですか?

案内役

放棄した人は、最初から相続人でなかったことになります。指輪は、残るほかの相続人が分け方を決めることになりますよ。

民法939条には、相続の放棄をした人は「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と書かれています。国税庁のタックスアンサー(No.4132)でも、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされると案内されています。

そのため、遺品の金の分け方は、放棄しなかった相続人の話し合いで決まります。放棄した人が口を出せない、という意味ではありませんが、決めるのはほかの相続人です。

手元にある金は、引き渡すまで大切に保管します

民法940条には、放棄した人が相続財産を現に占有している時は、相続人などに引き渡すまでの間「自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」とされています。

例えばこんな場面です。母と同居していて、金の指輪やネックレスが家にある。放棄した後も、次に受け継ぐ相続人に渡すまでは、なくさないようにしまっておく必要があります。

放棄した後の遺品の金の扱い方
  1. 手元にある遺品の金を一覧にして、写真を撮る
  2. 箱にまとめ、なくさない場所に保管する
  3. 誰が次の相続人になるかを確かめる
  4. 相続人に一覧を渡し、品物を引き渡す
  5. 引き渡した日と品物を、メモに残しておく

誰が相続人になるかは、民法887条・889条・890条の順番で決まります。国税庁のタックスアンサー(No.4132)では、次のように案内されています。

順位相続人になる人
常に亡くなった方の配偶者
第1順位亡くなった方の子ども
第2順位亡くなった方の直系尊属(父母や祖父母など)
第3順位亡くなった方の兄弟姉妹

子どもが全員放棄すれば、亡くなった方の父母など、さらにその次は兄弟姉妹へと順番が移ることがあります。

遺品整理と相続放棄。片付けはどこまでしていい?

相続放棄を考えている時は、遺品整理そのものにも気をつけたいところです。部屋を片付ける中で、売れる物や価値のある物を処分してしまうことがあるからです。

おたからや公式のコラムでは、遺品整理の仕分けの順番として「重要書類、貴重品(貴金属・時計・現金)、相続関連資料、思い出の品、処分品」が挙げられています。金や貴金属は早い段階で取り分けて、手を付けずに保管しておくと安心です。

放棄を考えている時の遺品整理チェック
  • 金・貴金属・時計・現金は先に取り分けて保管したか
  • 売る・譲る・捨てる前に、家庭裁判所や専門家に確認したか
  • 遺品整理業者に頼む時、残す物と処分する物を分けて伝えたか
  • 業者が買い取る時は、古物商許可証を確かめたか

国民生活センターの見守り新鮮情報(第525号・2025年10月30日)では、遺品整理を頼む時は複数の事業者から見積もりを取り、残しておく遺品と処分する遺品を明確に分けて、作業にはできるだけ立ち会うよう案内されています。

業者に頼む時の詳しい注意は遺品整理で貴金属を見落とさないためにで、金が出てきた時の最初の手順は遺品から金が出てきたら最初にすることで説明しています。

放棄しない家族が金を売る時の流れ

遺品を整理中の人

私は放棄しますが、兄は相続するそうです。兄が母の金を売るのは問題ないですか?

案内役

相続するお兄さんたちが、分け方を決めてから売るなら大丈夫です。放棄した方は、手元の品を引き渡すところまでしておきましょう。

放棄しない相続人は、遺産分割の話し合いで金の分け方を決めます。分け方が決まるまでは、遺品の金は相続人みんなの共有です(民法898条)。

例えばこんな場面です。兄と姉が相続し、妹が放棄した。この時は兄と姉の2人で、どれを残してどれを売るかを決めます。

妹が手元に預かっていた金があれば、先に2人へ引き渡しておくと話が進めやすくなります。

まずは残したい物を決めて、売る物は相続人どうしで話し合ってから選びましょう。売ると決めた品だけを、自分で選んだ買取店に持っていき、品物ごとの金額を聞いてから決める流れが安心です。

おたからやでは、査定料・出張料・キャンセル料は無料と案内されています。LINE査定も「売らずに金額を知るだけでも大丈夫」とされているので、相続人で話し合う前に金額だけ聞いておくこともできます。

PR|金・貴金属の買取

売ると決めた形見だけ、金額を聞いてから

残す物を決めて、家族で話し合ったら、売る品だけを査定に出しましょう。刻印のない品や壊れた品も、店で品物を見てもらい、1点ずつ金額の説明を聞いてから決められます。査定だけでも大丈夫です。

査定料無料公式サイトで買取価格を確認する

買取価格は日々変わります。最新の価格・条件・必要書類は公式サイトで確認してください。

店頭での買取には、クーリング・オフの制度がありません。金額を聞いたらいったん持ち帰り、相続人みんなが納得してから売ってみてください。

放棄した人が査定に付き添う時

放棄した人が品物を店に持ち込んで売ると、事情によっては処分と見られるおそれがあります。売る手続きは、相続する人が自分で進めるようにしておくと安心です。

「相続放棄と形見分け」よくある相談

ネットの相談サイトでよく見かける悩みを3つ取り上げます。

放棄するなら家の片付けもできないと言われた

相続放棄をすると決めたら、亡くなった方の家の片付けもできないと弁護士に言われた、という相談です。

片付けの中で物を捨てたり売ったりすると、処分にあたるおそれがあるからだと考えられます。どこまでなら手を付けてよいかは事情によって変わるので、相談した弁護士にもう一度具体的に確かめてみてください。

金や貴金属のように価値のある物は、写真を撮って保管するところまでにしておきましょう。

放棄した人が遺品を売ったら、どこまで調べられる?

相続放棄をしたら亡くなった人の物を売ったりもらったりしてはいけないと聞くけれど、どこまで調べられるのか、という相談です。

大事なのは「調べられるかどうか」より、売ることで放棄が認められない原因になりうる、という点です。民法921条では、放棄の前に処分した時も、放棄した後に隠したり使ったりした時も、単純承認とみなすとされています。

後から借金を受け継ぐことになれば、取り返しがつきません。迷う時は、手を付ける前に家庭裁判所や弁護士・司法書士に相談してみてください。

形見分けや不用品の処分は、誰が判断するの?

相続放棄をした時、形見分けをした・不用品を処分したといったことを、誰がどう判断するのか、という相談です。

決まった線引きが法律に書かれているわけではなく、品物の価値やその時の事情から個別に判断されます。自分で「これくらいなら大丈夫」と決めずに、受け取る前・処分する前に専門家へ確認しておくと安心です。

よくある質問

相続放棄をしても、形見分けで金を受け取れますか?

受け取っても単純承認にならないと言い切れる決まりはなく、品物の価値や事情で個別に判断されます。金は金額の目安が出やすい品なので、受け取る前に家庭裁判所や弁護士・司法書士に確認しておきましょう。

相続放棄の前に、遺品の金を査定に出してもいいですか?

金額を聞くだけで売らなければ、処分にはあたりません。ただ、品物を持ち出す前にほかの相続人と共有しておくと、後で誤解を招きにくくなります。売るのは放棄するかどうかを決めてからにしましょう。

相続放棄の期限はいつまでですか?

自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条)。財産を調べても判断できない時は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。

放棄した後、手元にある遺品の金はどうすればいいですか?

次に受け継ぐ相続人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保管します(民法940条)。売ったり使ったりはせず、一覧を作って引き渡しましょう。

相続放棄をしたら、思い出の品は何も持てないのですか?

何も持てないと決まっているわけではなく、品物の価値や事情で個別に判断されます。金のように金額の目安が出やすい品は、受け取る前に専門家へ確認しましょう。写真に撮って思い出として残しておく方法もあります。

まとめ

この記事の要点
  • 相続放棄は、知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する(民法915条・938条)
  • 放棄の前に遺品の金を売るなど処分すると、単純承認とみなされうる(民法921条1号)
  • 形見分けで受け取ってよい範囲は個別の判断。金は受け取る前に専門家へ
  • 放棄した後も、引き渡すまでは大切に保管する(民法940条)
  • 相続する家族は、分け方を決めてから、売る品だけ金額を聞いて決める

形見の金の扱い方の全体は形見の金を売るには?遺品から出てきた金の扱い方と売り方でまとめています。勝手に売られてしまった時の対応は相続人の一人が遺品の金を勝手に売ったら?をご覧ください。

形見の金.jp

形見の金.jp 編集部

遺品整理で出てきた金の指輪・ネックレス・金貨・おりんなどを、家族で納得して残す・分ける・売れるよう、国税庁・裁判所など公的機関と各社の公式情報をもとに整理している情報サイトです。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次